「安全」だけで終わらせない。子どもの時間の「質」をつくる建築

今回ご紹介するのは、放課後等デイサービス施設の新築プロジェクトです。
福祉施設の設計では、法規・安全・動線が最優先されるのは当然ですが、それだけでは「使える箱」止まりになってしまいます。
私たち一級建築士事務所イストが重視したのは、子どもたちが過ごす時間の密度と、支援者の視線・行為が自然につながる空間構成でした。
計画の前提条件と設計課題
本計画で与えられた条件は、決して余裕のあるものではありませんでした。
- 限られた敷地条件
- 放課後等デイサービスとして求められる用途制限・法規
- 日常的な見守りと、静と動を切り替える運営ニーズ
ここで安易に「無難な平面」を選ぶと、
- 見通しが悪くなる
- 音が拡散し落ち着かない
- 支援者の動線が分断される
といった問題が必ず生じます。本当に必要なのは“管理しやすい空間”なのか、それとも“育ちを支える環境”なのか。この問いを、設計の起点に置きました。
内部空間|視線と距離を設計する

大空間=自由、ではない
メインとなる活動室は、あえて余白を多く確保しています。ただし、単なるワンルームではありません。
- 視線が抜ける配置
- 行為が重なっても干渉しすぎない距離感
- 将来的なレイアウト変更への耐性
を同時に成立させるため、壁・開口・収納の配置で空間を「ひとつの空間の中に、自然と使い分けできるゾーンをつくる」ように設計しています。
子どもたちが走り回る時間と、静かに座って過ごす時間、そして集中する時間が同時に重なっても、空間が窮屈にならないように計画しています。そのためには、日々の運営を具体的に想像することが欠かせません。
素材と色彩の選択

床・壁・建具は、主張しすぎない明度と質感で統一しています。刺激を抑えることは、単なる配慮ではなく空間の性能です。
- 木目調の床:温かみとメンテナンス性の両立
- 白を基調とした壁:光を拡散し、表情を読み取りやすく
装飾でやさしさを演出するのではなく、空間そのものが落ち着きを感じられるように設計しました。
動線計画|支援者の負荷を減らす

放課後等デイサービスでは、支援者の視線移動と身体移動がそのまま安全性に直結します。
- 見守りやすい直線的な動線
- 死角を極力つくらない建具配置
- 退出・避難を想定した明快な経路
図面上ではうまく見えても、実際の広さや距離感が想定と違えば、思うように機能しないことがあります。そのズレが生まれないよう、計画段階から現場での使われ方を意識しています。
外観・配置計画|地域との距離感

外観は、福祉施設であることを過度に主張しない構成としました。
- 住宅地に自然に溶け込むボリューム
- 明快なエントランスとサイン計画
- 駐車場・送迎動線の整理
赤い扉は、子どもにとっての「わかりやすい目印」であり、同時に施設の個性を過不足なく表現しています。地域に開きすぎず、閉じすぎない。この“距離感”も、建築が担う役割のひとつです。
完成して見えたこと
完成してあらためて感じたのは、放課後等デイサービスの建築には、ひとつの正解があるわけではないということでした。
むしろ、さまざまな状況の変化に無理なく対応できる余白を持たせることが大切だと考えています。
子どもたちの成長や特性は一人ひとり異なり、運営の形も時間とともに変わっていきます。
そうした変化を受け止められるかどうかは、最初の設計の積み重ねにかかっています。
一級建築士事務所イストでは、制度や運営体制、日々の人の動きまで丁寧に想像しながら、これからも建築と向き合っていきます。
放課後等デイサービス・福祉施設の設計をご検討の方へ
- 初めての指定申請で不安がある
- 運営後の使いにくさを避けたい
- 既存施設との差別化を図りたい
そうした段階からでも、設計者として伴走します。お気軽にご相談ください。
